参加フェローの声
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2週間の訪米プログラムを終えて
第1回となる2024年度「渡邉利三デモクラシー・フェローシップ」のフェロー8名は、7月14日から26日までロサンゼルスとワシントンD.C.に滞在。政府やNPO、シンクタンクなどを訪問し、多様な学びと対話の機会を持ちました。
岩川雄太さん
2024年度フェロー
住友商事株式会社において、エチオピア総合通信事業に関する資本政策策定を担当。現地パートナーと連携し、通信インフラの整備を通じた社会・経済の発展に貢献。
日米の課題共有から生まれる未来
日米それぞれが抱える課題は異なり、国、宗教、成り立ち、状況のすべてが違う中、一国で普及している方法をそのまま押し付けることは失敗する可能性が高くあります。しかし、お互いの情報交換や課題共有を通じて、双方にとって有益なアドバイスや参考点を見つけることができると考えます。フェローシップを通し、日米で協力できる点を見つけ、実行に移していけるようなパートナーシップを築いていくことが重要だと改めて感じました。
小磯洋光さん
2024年度フェロー
翻訳家、詩人。訳書にアン・ カーソンの『赤の自伝』、テジュ・コールの『オープン・シティ』など。移民への関心から、2023年には在日外国人の故郷の歌を日本語に翻訳するプロジェクト「BGM/みんなのうた」に参加。
物語を伝え、民主主義に貢献する
さまざまな場所でさまざまな人の歴史に触れることができ、どの場所にも複数の歴史の層があることを実感しました。そして、自分を含め、人は誰でも現在進行形の歴史の物語を生きていると思いました。訪米中、20世紀の日系人による作品に出会いました。今、私はそれらの翻訳を進めています。私の役割はかつて生きた人の記憶や物語を、別の言語に蘇らせて共有することです。そのようにして民主主義の価値を検討し、高めることに貢献したいと思っています。
増永祐子さん
2024年度フェロー
オリックス株式会社、IR・サステナビリティ推進部担当部長。オリックス入社前は、アメリカの法律事務所で弁護士としてキャピタルマーケットや環境法に携わった。
課題を可視化し、リソースを確保して、行動を起こす
このフェローシップから学んだ最も重要なことは、社会問題に取り組む上で、それを可視することとリソースの重要性です。この旅でアメリカが直面する社会問題と、それらに取り組んでいる人々や機関に触れました。彼らの情熱や正義感だけでなく、状況を改善するために何をすべきかという冷静な評価と、具体的な行動を起こす能力に感銘を受けました。日本はアメリカの「失敗を恐れず挑戦する」姿勢から多くを学べ、アメリカは日本の「他者への配慮」から多くを学べます。
大竹くるみさん
2024年度フェロー
独立行政法人国際交流基金、日本研究部のプログラムオフィサーとして、海外の日本研究機関や研究者を支援する業務を担当。日本と世界の人々をつなげ、相互理解を深めることに尽力している。
数ではなく人がつくる社会を支えるプログラムを
本プログラムで最も強く感じたことは、個人に起因する人と人とのつながり、一人一人の言動が、共同体や制度を動かし前進させる源であることです。民主主義は制度として存在する一方、未熟な実験段階であり、希望を持って参加することが求められています。個々人のつながりによって育まれてきた米日関係、各地域の民主主義を発展させていくため、本フェローシップの参加者と支え合い、数ではなく人がつくる社会を支えるプログラム作りに貢献していきます。
篠原史仁さん
2024年度フェロー
外務省軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課課長補佐。国連総会(第一委員会)およびジュネーブ軍縮会議をはじめ、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)や宇宙空間における軍備競争の防止分野を担当。
主体的に社会問題に取り組む姿から、日本が学べること
充実した日程の中で痛感したのは、日米間の政治システムと公共のあり方の違いでした。その違いが民主主義における市民参加のあり方にも違いを生み出しています。米国市民が主体的に社会問題へ取り組む姿勢や、公共における多元性の存在は、日本において参考になるものです。民主主義国家における政府として市民のニーズに応えつつ、投票を含めて、市民がより活発に政治参加していく道筋を模索する必要があると再認識しました。
德山拓一さん
2024年度フェロー
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAを経て、2016年より森美術館勤務。現在、森美術館キュレーター。東北芸術工科大学の客員教授も務める。
理論的知識から実践的な理解へ
このフェローシップを通じて、日系アメリカ人の歴史やアメリカの政治システム、社会問題に対する多角的なアプローチを深く学ぶことができました。実際に歴史的な場所を訪れ、現地で直接話を聞くことができた点が最も有益で、理論的な知識が実践的な理解へと深まりました。また、さまざまな分野で活躍する他のフェローたちの積極的な学びの姿勢から多くのインスピレーションを受け、私自身の学びや成長につながりました。
若井康一郎さん
2024年度フェロー
株式会社ユニクロ、グローバルマーケティング部 サステナビリティマーケティングチーム勤務。服の循環を目指す「RE.UNIQLO」と、服をより長く着るためのリペア、リメイクサービスを提供する「RE.UNIQLO STUDIO」のコミュニケーションを担当。
異なる価値観を尊重し、「違い」を社会の力に変える
このプログラムで、アメリカがいかに多様な文化的背景や価値観、誇りを持つ人々によって成り立っているかを肌で感じることができました。互いの異なる価値観を尊重し、共存し、人々の「違い」を社会の力に変えている点が印象的でした。また、日本人・日系アメリカ人の双方の視点で日米関係を考える機会を持てたことで、日本とアメリカの双方に帰属意識が芽生えました。今後、日米の架け橋として両国の関係性強化に取り組んでいきたいと思います。
渡邊裕希乃さん
2024年度フェロー
慶応義塾大学法学部法律学科を卒業後、三菱東京UFJ銀行(現、三菱UFJ銀行)へ入行。現在はニューヨーク支店で日系上場企業の営業支援を行っている。
アフリカ系アメリカ人の苦難の歴史に学ぶ教訓
ワシントンD.C.では、アフリカ系アメリカ人の苦難の歴史を学び、人が物として扱われ、人権が奪われることの恐ろしさを目の当たりにしました。民主主義を支えるのは多数決ですが、奴隷制や人種差別も、当時は多くの人が賛成したことによって行われたものです。それを考慮すると、現代の私たちもただ民意を聞き入れるだけではなく、民意が正しく公平に運営されるようなシステムを構築しなければならないと改めて感じました。