藤幡正樹
「1942年5月9日土曜日の午後12時(太平洋戦時時間)以降、日本人の祖先を持つ者は、外国人もそうでない者も、以下に記す第1軍事区域から立ち入り禁止とすることをここに命じる…」
1942年5月9日土曜日、ロサンゼルスのリトル東京に暮らしていた日系アメリカ人の生活は、一変してしまいました。この日の正午までを期限として家や財産を処分する時間を与えられ、この場所から強制的に立ち退かされたのです。西海岸に暮らしていた約12万人の日系アメリカ人(うち3万7000人がロサンゼルスに住んでいました)は、アメリカ政府の婉曲的表現を使って言えば、「転住センター」に「避難」させられました。実際には、バスや列車に乗せられて強制収容所へと送られ、何年も場合によっては終戦後までそこで暮らすことになりました。
リトル東京から人の姿が消えたあの5月の土曜日からちょうど80年後、「BeHere /1942:日系アメリカ人強制収容についての新たな視点」展が開幕します。この展覧会は、さまざまなメディアを駆使して、この暗黒の歴史的瞬間に、これまでにない新しい形で触れていただく機会を提供します。ロサンゼルスやその他の都市からの日系アメリカ人の強制立ち退きは、プロの写真家たちによって記録され、中でも収容所への出発を待つ家族の写真は、この強制収容を象徴するものとして広く知られています。本展覧会では、そうした写真の中でもドロシア・ラングとラッセル・リーによるあまり知られていない写真を慎重にキュレーションし、いくつかを超拡大したり、ビデオ映像として再構成し、存在することすら知られていなかったものを歴史的写真資料の中に浮かび上がらせます。また最先端の拡張現実(AR)技術を使い、来館者に歴史的瞬間を切り取った写真家となり、その場所にいる経験をしていただきます。
JANM館内での展示に加え、JANMのメインの建物と歴史ある旧西本願寺の間のプラザでは、画期的なパブリックARインスタレーションが設置されます。このインスタレーションでは、専用アプリ「BeHere / 1942」を通して、来館者は過去へと足を踏み入れ、まもなく収容所へと出発する日系人たちの間を歩むことができます。この過去の再現は地域の日系アメリカ人コミュニティーの参加を得て実現したもので、子供時代を収容所で送った3人も参加しています。
「BeHere /1942:日系アメリカ人強制収容についての新たな視点」展は、日本人メディアアーティスト、藤幡正樹の制作により、JANMと、UCLAと早稲田大学(東京)の柳井正イニシアティブ・グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクトが共同開催するものです。どうぞお見逃しなく。本展覧会のカタログはJANMストアと柳井イニシアティブのWebページからご購入いただけます。
メジャー・スポンサー: Yanai Initiative for Globalizing Japanese Humanities at UCLA and Waseda University, Tokyo. アソシエート・スポンサー: National Trust for Historic Preservation’s Telling the Full History Preservation Fund. Additional support is provided by the UCLA Arts Initiative, the Japan Foundation, and the Asahi Shimbun Foundation.
メディア・スポンサー:
上写真:オーエンズ・バレー(マンザナー)に向かう列車を待つ二人の少女が撮影されている。写真:ラッセル・リー。1942年4月、カリフォルニア州ロサンゼルス。Courtesy of the Library of Congress, www.loc.gov/resource/fsa.8a31184.