「グレン・カイノ：アキの店」は、アキラとサチエ・シライシ夫妻が1957年から1970年にかけてイースト・ロサンゼルスのコミュニティーで営んでいた小さな店に着想を得ています。アキラの孫で、祖父の名前を継いだグレン・アキラ・カイノが制作したこの展覧会では、 カイノとその家族、コミュニティーの物語を通して、第二次世界大戦中に日系アメリカ人が経験した強制収容が引き起こした世代を超えたトラウマに焦点を当てます。本展は、アメリカが行った強制移住という行為への問いかけでもあり、およそ100年に及ぶ文化的抑圧の苦しみを、スピリチュアルで探索的な空間に解き放ち、平和の根幹となる要素を見出すことができる機会となるかもしれません。

本展は、カイノの祖父であるアキラ・シライシの生涯をもとにして作られています。アキラは高校時代、よく知られたフットボール選手でしたが、ワイオミング州のハートマウンテン強制収容所に収容され、オクシデンタル大学への進学という夢を諦めざるを得ませんでした。戦後、イーストLAに戻ったアキラは、サチエとともにブランチャード・ストリートとジェラティ・アベニューの角に、日系とヒスパニック系コミュニティーのために多文化共生の象徴となる店を作ることに生涯を捧げました。

カイノは亡き祖父のことを、家族から聞いた話を通じてのみ知っていました。カイノは、祖父の店を再現するために、オリンピック選手のトミー・スミスなどの歴史的人物に対して使用した、自身のアーティストとしての手法の一つである、多くの会話や質問を通して過去の記憶を呼び覚ますという方法を使いました。彼は、この手法を駆使して家族の記憶を引き出し、彼らが「店」と呼んだ場所の全体像を描き出しました。

バーチャル・リアリティーで再現した店と、同じ名前の店の現代的なバージョンを再現したインスタレーションを通して、「グレン・カイノ：アキの店」展は、過去の記録が想像の世界に溶け込み、最先端のテクノロジーが最も個人的な過去の経験に働きかける、集合的記憶を表現した展覧会です。 

「グレン・カイノ：アキの店」展は、ナショナル・エンダウメント・フォー・ザ・アート、ロサンゼルス市文化局、芸術文化局を通じたロサンゼルス郡監督委員会の支援を受けています。また、パサデナ・アート・アライアンスにもお礼を申し上げます。

アキの店のスナップ写真、ロサンゼルス、1957年頃。グレン・アキラ・カイノ提供。
グレン・カイノ、アキの店、2023年、バーチャルリアリティーによる再現イメージ。グレン・アキラ・カイノ提供。